大三元レンズやF1.4、F1.2といった大口径レンズはお持ちでしょうか?
レンズ交換式レンズの醍醐味は、何とといっても色々なレンズを使い分けて楽しむことができる点ですよね。
そしてカメラ歴が長くなればなるほど、使うレンズの質にもこだわりが出てくるものです。
一般的に、カメラ用レンズとして上級者であればあるほど、大三元レンズと呼ばれるF2.8通しのズームレンズや、F1.4を下回る大口径の単焦点レンズを使いたいと思うことが増えてくるのではないでしょうか。
写真撮影の場合、画質というのはカメラの違いよりレンズの違いに大きく依存してきます。どんなに素晴らしいスペックのカメラを使っていたとしても、それに取り付けるレンズがキットレンズでは良い写真を撮るのは難しいでしょう。
一方で動画撮影の場合はどうでしょうか。
これは人により考え方が異なりますが、個人的には写真撮影ほどレンズのスペックを求める必要はないんじゃないかと思っています。レンズのスペックが上がることで、画質の面ではプラスに働きますが、同じぐらいマイナスに働く要素も多いからです。
本日は、動画撮影に大三元レンズやF値の低い大口径レンズが必要ない理由について解説したいと思います。
動画撮影で重要なレンズの要素
ジンバルで使いやすい軽量コンパクトなレンズであること
個人的にこれが最も大切だと考えています。
動画の撮影には、ブレを抑えるジンバルという機材を使うことがあります。ジンバルを使えば、映画のようなブレのない滑らかな映像を撮ることができるため、本格的に動画撮影をやりたいなら必須のアイテムです。
しかしジンバルというのは重たいカメラのブレを抑えるためのパワフルなモーターが搭載されているため、意外と重量があります。軽いレンズを使っていたとしても、ジンバル+カメラ+レンズの組み合わせで、総重量が2kgを超えることも珍しくありません。
2kgを超える機材を使って撮影していると、長時間の撮影が非常にしんどくなってきます。少しでも機材の重量を軽くするためにも、レンズは軽くてコンパクトであることに越したことはないのです。
また、ジンバルじたいのスペックも考慮する必要があります。ジンバルに搭載可能な重量はジンバルごとに決まっています。一眼カメラ向けのジンバルであれば、だいたいの製品で搭載可能な上限は2kg〜5kgといったところでしょうか。大きく重たいレンズの場合、ジンバルの許容搭載量を超えてしまう可能性もあるわけです。
手振れ補正搭載
最近のカメラのトレンドはボディ内手振れ補正の搭載です。
ほとんどのカメラメーカーでカメラ本体に手振れ補正が搭載されるのが当たり前になっています。もちろん、動画の天敵は意図しないブレですので、ボディ内手振れ補正はほぼ必須と言っても過言ではないかもしれません。
しかし、レンズ内手振れ補正についてもあった方が良いです。レンズ内手振れ補正が搭載されている場合、ボディ内手振れ補正と連動して、さらに強力に手ブレを防いでくれる場合が多いですし(※メーカーによる)、何よりジンバルに載せた時小さなブレを抑制してくれます。
重ねて言いますが、動画の天敵は意図しないブレです。ブレのない滑らかな映像を撮るためにも、レンズ内手振れ補正が搭載しているレンズを優先して購入することをお勧めします。
F値固定
これは上記ほど重要ではありませんが、できればF値固定のレンズの方が使いやすいと思います。動画撮影はマニュアルモードで撮ることが多いと思いますが、F値が変動すると背景のボケ具合や露出設定などが変わってしまうので、見ていて非常に違和感のある映像に仕上がってしまいます。
まぁ、都度設定すれば防げる要素ではありますが、都度設定というのは地味に面倒だったりします。無駄な作業を減らすという意味でも、動画撮影では単焦点レンズを使うか、ズームの場合はF値固定のレンズがおすすめです。
大三元レンズや大口径レンズが動画撮影に向かない理由
レンズが大きく重くなりがち
大三元レンズ、F値の小さい大口径レンズは、光学性能も妥協なく作られています。たくさんのレンズを使い、
しかし、そうしたレンズはどうしてもレンズ本体が大きくなり、重量も重くなってしまいます。
写真撮影の場合、撮影は連写でもしない限り一瞬で終了します。レンズが多少重くても、短時間であれば我慢して撮影というのもできなくはありません。
一方で、動画の場合、一回の撮影時間は写真よりも長くなることが多いです。そのため、レンズの重さという点は写真撮影よりもシビアに考えなければなりません。
例えば、フルサイズカメラの重量は、ミラーレスカメラなど比較的軽いカメラの場合でも約700g程度です。そこに、24-70mm F2.8の大三元レンズを取り付ければ、総重量は2kgを超えます。
動画撮影はたくさんのカットをつなぎ合わせて一つの作品を構築する関係上、1日中撮影することも少なくありません。
人間の体力には限りがあります。動画撮影の場合、使うカメラとレンズは可能な限り軽くてコンパクトであるに越したことはないのです。
背景をぼかすならF1.8あれば十分
聞く人が聞けば怒るかもしれませんが、ぶっちゃけ動画撮影において、F値は1.8あれば十分だと思っています。
F値の低いレンズを使うのはなぜでしょうか。まずは何といっても背景をぼかす写真が撮れるからですよね。他にも、F値が低いとその分光を多く取り込めるため、夜間の撮影がしやすいという点もあります。
もちろんそれは動画撮影でも同じことが言えます。
しかし、動画撮影の場合、背景をボカしたいという目的であればF値は1.8あれば十分です。もちろんF1.4はさらにボケるのですが、一枚の静止画をずっと眺めている写真と違い、動画は常に画面が写りゆくため、その差を感じることは写真よりもずっと少ないです。
逆に大三元レンズの場合、F2.8で複数の焦点距離を瞬時に切り替えながら撮影できるというのは非常に便利ですが、ボケ量だけ考えるとF1.8レンズの方が大きいですし、軽くてコンパクト、さらに最短撮影距離が短いことも多いです。
つまり、背景ボケだけを考えるならF1.8レンズで十分であり、また、F1.8のレンズはF値を多少抑えている分、軽くてコンパクトなことが多く、最短撮影が短いなど、動画撮影に向いている点も見逃せませんね。
動画は写真ほど画質にシビアにならなくて良い
これもこだわる人が聞けば怒るかもしれませんが、動画というのは静止画を何枚も連続して構成されています。そのため、静止画一枚一枚のクオリティについてはそれほど注意する必要がありません。
写真の場合、一枚の静止画の中で露出やWB、色合いやボケ具合など、要素の全てを表現する必要があります。一方動画の場合、同じ画面が長時間表示されることは稀ですし、音楽やトランジションなど、映像以外でクオリティに関わってくる要素も多いため、画質というのに写真ほどシビアに考えなくて良いのかなと思っています。
それが動画の楽しいところであり、難しいところでもありますね。
動画撮影におすすめのレンズ
F4通しの小三元ズームレンズ
F4通しのズームレンズは非常にお勧めです。画角を素早く変えて撮影できるのは非常に便利ですし、大三元と違ってF値が大きい分、レンズ本体の重量は軽くてコンパクトであることが多いです。
手振れ補正を搭載しているレンズも多く、日中の手持ち撮影はもちろん、ジンバルに載せての撮影なんかでも広く活用することができるかと思います。
F1.8の単焦点レンズ
よく撒き餌レンズなんかに採用されることも多いF1.8の単焦点レンズもおすすめです。F1.8とかなり明るいレンズですが、軽量コンパクトであることも多く、最短撮影距離が短く、クローズアップしたショットも撮影しやすいです。
日中の場合、NDフィルターを使わないと絞り開放で使うのは難しいですが、夜間の撮影なんかでは非常に頼りになるレンズです。
マクロレンズ
被写体を大きくクローズアップして撮ることができるマクロレンズなんかも、動画撮影に利用することで面白いショットを撮影することができますよね。
マクロレンズには50mm前後の標準マクロレンズと、90mm〜100mm前後の中望遠マクロレンズがあります。とりあえず一本持っておくのであれば、中望遠マクロの方がワーキングディスタンスが長いため、動画の撮影には使いやすいかと思います。
まとめ
本日は動画撮影における大三元レンズや大口径レンズの立ち位置についてと、動画撮影に向いているレンズについて解説をしました。
まぁ色々言いましたが、まずは今あるレンズを使ってとりあえず撮ってみる、という考え方で良いかと思います。
実際の撮影をしてみないと、どんなレンズが動画撮影にむいているかなんてわからないですからね。ただ、動画を撮りたいと思ったからと言って、いきなりハイスペックなレンズを購入する必要はない、という一個人としての見解でした。
本日はこんなところで。
また次回お会いしましょう。