写真撮影の中でも人気のあるジャンルの一つに 野鳥撮影 があります。
野鳥撮影用のカメラと言えば、少し前までは一眼レフ機が主流でした。ミラーレスカメラは一眼レフに比べて動体撮影には弱いとされてきたためです。
ミラーレスカメラが野鳥撮影に向かないと言われてきたのは主に以下の理由があるためです。
その中でも特に大きな要因だったのがファインダーがEVFである、という点でしょうか。EVFはOVFに比べ、逆行時や夜間でも構図が確認しやすい、WBや露出設定などがリアルタイムで反映されるので絵作りを確認しやすい、といったメリットがあります。
EVFの場合、所詮はモニターを解して映像を見るということになりますので、実際の動きとEVFに映る映像とでタイムラグが発生してしまうという問題が起こります。
このタイムラグは静物の撮影で気になることはほとんどありません。一方で、動体撮影の場合は少しのタイムラグでも撮れ高に大きな影響を与えてしまうのです。
しかし、ミラーレスカメラの性能は年々高まり、この部分の進化も凄まじい速さで進んできました。現在では、OVFと比べても遜色ないEVFを搭載したミラーレスカメラ も次々と発売されています。
もともとカメラのボディサイズをコンパクトに作りやすいミラーレスカメラは野鳥撮影との相性は悪くありません。ネックとなっていた部分が克服されたため、2022年現在、野鳥撮影のツールとして ミラーレスカメラは有用な選択肢 となり得ました。
野鳥撮影用のカメラで重視する機能・ポイント
もちろん、全てのミラーレスカメラが野鳥撮影に向いているというわけではありません。では、野鳥撮影に使うのであれば、どんなミラーレスカメラが向いているのでしょうか。
選ぶ上で重要となる機能やポイントについて整理してみたいと思います。
AFの速さ・正確さ
野鳥は常に動き回っています。こちらの撮影を待ってはくれません。そのため、重要になるのはカメラのAFの速さと精度です。素早く正確に野鳥にピントを合わせられれば、それだけ撮影の撮れ高は高まります。
カメラのAFには位相差AFとコントラストAFの2種類が存在します。ざっくりいうと、位相差AFはピント合わせの速度が優れ、コントラストAFはピント合わせの精度が優れています。
どちらもメリット・デメリットがありますが、最近のカメラはこれらのAFを組み合わせた ハイブリッド方式のAF を採用しているものも多いです。
連写性能
小型の鳥であるほど常に動き回っています。そんな中、1枚1枚単写で撮影していると、満足のいく写真というのはなかなか撮ることが難しい です。
そこで役に立つのが連写での撮影です。
数打ちゃ当たるの精神で、とにかく連写で撮影しまくっていれば、満足のいく写真が撮れる可能性は高まります。
最近のカメラであれば、20コマ/秒や30コマ/秒という驚異的な速度での連写ができるカメラも増えてきました。ただ、無闇に連写しすぎると、後で写真を選ぶのが大変になってしまいます。
基本的には連写は 10コマ/秒 程度できれば十分野鳥撮影に使うことができるでしょう。
野鳥撮影用おすすめのミラーレスカメラ
α1(ソニー)
予算に余裕があるならおススメしたいのは、ソニーのフルサイズミラーレスカメラ α1です。
有効画素数5000万画素、最高30コマ/秒の高速連写性能、ブラックアウトフリー連続撮影、強力な瞳AFと、もはや弱点がありません。
ソニーはフルサイズのミラーレスカメラとしてαシリーズを長年販売してきましたが、そんなソニーが初めて フラッグシップ機と公言 したカメラがα1です。
一方で気になるのは 高すぎる価格 です。新品で80万円ほどするカメラですので、気軽に購入できるカメラでは決してありません。野鳥撮影を障害の趣味にする という覚悟があるのであれば、検討の余地はあるかと。
レンズについてはいくつか選択肢があります。
- FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS
- FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS
- FE 600mm F4 GM OSS
性能だけで考えるなら『FE 600mm F4 GM OSS』が間違いないです。が、お値段も100万円超えですので、初めの一本としてオススメできるものではありません。
価格と性能のバランスが一番良いのは『FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS』ですね。600mmまで撮影可能な超望遠レンズとしてはお値段もそれなりです(高いと言えば高いけど)。
大きさも手持ちがギリいけそうなぐらいに収まっています。α1のコンパクトさと合わせて、かなり機動力に優れた撮影システムと言えるでしょう。
α9 II(ソニー)
飛翔している鳥を撮影する場合、α9 IIもおすすめです。
ぶっちゃけα1が予算内ならα1の方が良い気もしますが、動体撮影という観点のスペックではα9も20コマ/秒の連写性能を持っていますので、全く見劣りしません。
画素数が少ないというのも見方によってはメリットにもなります。RAWのデータサイズも小さくなるので管理も楽ですし。
α1の登場で若干影が薄くなってしまいましたが、価格に見合ったスペックは十分有している のではないでしょうか。
レンズは『FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS』との組み合わせが良いんじゃないかと思ったり。焦点距離は少々短いですが、レンズの光学性能的には『FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS』を上回りますし、サイズも小さいので持ち運びも楽ちんです。
α7R IV(ソニー)
ソニーのα7R IVは、6100万画素というフルサイズ機でもトップクラスの画素数を誇るカメラです。
画素数が大きいと写真の画像サイズも増えてしまうため、SDカードの容量なども逼迫しがちになってしまうのですが、その分 解像性能に優れた写真を撮る場合は頼もしい存在 です。
野鳥撮影の場合、画素数が多いとクロップ耐性に強くなるため、意外と高画素機との相性は良いです。
レンズの費用は抑えたいという場合、シグマから出ているライトバズーカ、『100-400mm F5-6.3 DGDN OS Contemporary』がオススメです。
400mmレンズがあれば、最低限の野鳥撮影は始められますからね。
EOS R3(Canon)
最近発売されたばかりのカメラです。
キャノンとして発売するミラーレスカメラでは、初めてのグリップ一体型になります。グリップ一体型のため、ミラーレスカメラのメリットの一つであるコンパクトなボディという特徴は失われています。
しかし、カメラというのは必ずしも小さければ良いというわけではありません。
ボディが大きいということは、その分設置可能なボタンの数も増えるということです。物理ボタンで素早く設定を切り替えるという観点では、ボディは大きい方が操作性が良いということになります。
熱排出という点でも、ボディが大きい方が有利ですので、夏場の屋外などの気温が高い環境でカメラがオーバーヒートしてしまう可能性も下がります。
有効画素数は2410万画素と、フルサイズ機としては並の解像力ですが、α1と同等である 最高約30コマ/秒の高速連続撮性能 がありますので、動体撮影に非常に強いカメラです。
また、このカメラ最大の特徴が視線によるAFの移動が可能な『視線入力機能』の搭載でしょう。ボタンの操作を一切することなくピント合わせが可能になる機能で、かなり未来感を感じられるカメラです。
価格はα1と同じく非常に高価ですので、簡単に手が出るカメラではありませんが、『視線入力機能』によるピント合わせなど、野鳥撮影用ツールとしては非常に有用であることは間違いありません。
また、ソニーと違い、キャノンのEOS RFマウントには『RF800mm F11 IS STM』というレンズが存在します。スペックを割り切っている分、焦点距離800mmの超望遠レンズにもかかわらず、価格が10万円前後で買える非常にコスパに優れたレンズです。
カメラさえ頑張って買えばレンズは比較的手頃に買える というのがキャノンを選ぶ強みですね。
OM-D OM-D E-M1X(OLYMPUS)
この辺りからコスパが非常によくなってきます。
オリンパスから発売されている『OM-D OM-D E-M1X』も野鳥撮影用のカメラとしては有力な選択肢になります。このカメラはセンサーサイズに『マイクロフォーサーズ』という、フルサイズよりも小さいセンサーを採用しています。
センサーサイズが小さい分35mm換算の焦点距離がフルサイズの2倍になりますので、望遠側に強いです。その分、被写界深度が広いためボケにくいという性質がありますが、野鳥撮影においてはこの部分もメリットになりえます。
発売当初こそ30万円近い価格をしていましたが、2022年現在であれば、その半額近い価格で新品が購入可能 になっています。
縦グリ一体型ボディにより、マイクロフォーサーズとしてはかなり大型のボディなのが気になるのであれば、同じくオリンパスから出ている『OM-D E-M1 Mark III』もオススメです。こちらのカメラはコンパクトに仕上がってますし。
ただ、野鳥撮影という観点でいえば、鳥の瞳にピントが合わせやすい『インテリジェンス被写体認識AF』を搭載しているOM-D E-M1Xの方が適しているでしょう。
レンズは『M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO』の組み合わせが最もバランスが良いかなと思います。
まとめ
今回は野鳥撮影に向いているおすすめのミラーレスカメラについてまとめました。
野鳥の撮影には重たいカメラ・レンズと三脚や一脚が必須だった時代もありましたが、ミラーレスカメラの登場より、機動性を犠牲にすることなく野鳥撮影が楽しめるようになりました。
手振れ補正や鳥瞳AFなど、撮影をサポートする機能もどんどん登場してますし、野鳥撮影の難易度はグッと下がって生きている 印象です。
ただ、野鳥撮影に向いていると思うカメラについては、まだまだ価格が高いものが多いです。
野鳥撮影を本格的に楽しみたいなら、性能の良いカメラを初めに買っておいた方が後悔しないと思いますが、ちょっとした撮影であれば エントリーモデルのようなカメラでも十分楽しめる と思います。
自分予算と相談しつつ、納得のいくカメラを選ぶようにすることが大切です。